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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
北海道観光列車モニターツアー報告 1日目 [No.H261]
去る11月3日(金・祝)から5日(日)までの2泊3日で、
観光列車モニターツアー
道東ハイライト・感動本線
ふれあいの旅2泊3日(根室・釧路・石北本線)
が行われました。北海道にも観光列車を走らせることで、路線の維持と地域経済活性化を図ることを目的としたもので、モニター結果をもとに、この先の観光列車をいかに設定すると良いかが判断される見込みです。
同ツアーに筆者は取材で同行しましたので、その様子を、初日から1日ずつ3回に分けてご紹介します。
このツアーは、北海道の「観光列車旅行者動向調査事業」を受託した日本旅行が実施したもので、前週に行われた旭川~稚内往復2コースと、1月に開催される釧網本線日帰り2コースを併せた計3回が予定されています。その3回のなかでも、今回は2泊して道東を一周するという最も規模の大きなツアーで、80名の募集がわずか17分で売り切れる人気となりました。
そのスタートは札幌駅です。
キハ283系特急形気動車4両貸切で、9時53分に発車します。
帯広着12時55分まで、いきなり3時間あまりの長時間乗車となります。そこで、発車後にフォークグループ「福寿草」による車内ミニコンサートが、1号車から順に行われます。これで、ツアー当初特有の緊張感がほぐれた様子です。
ミニコンサートが終わった頃、列車は狩勝峠を越えて十勝平野に入り、新得に停まります。いよいよ道東のはじまりという新得駅では、昼食が積み込まれて、すぐ参加者に配布されました。
新得駅に駅そば店を開いている「せきぐち」が、同本店でこの日のために特別にしつらえてくれた「新得蕎麦」を使った弁当です。せきぐち本店は行列ができる人気店で、その日に打ったそばが無くなると閉店になるため、夕方には食べられなくなるそうです。
駅そばは湯がいて出される暖かい蕎麦だけですが、せきぐち本店では蕎麦の味をしっかりと味わうことができる盛りそばやざるそばもメニューにあります。そのもりそばが、弁当となって昼食に出されたのです。
極太麺で、かみ応えがしっかりとしたもので、これを十勝平野を眺めながら食べるのですから、たまりません。2つついている俵結びは、そばの実を混ぜたもので、まさに「そば弁当」です。
帯広駅では、駅前に停まっている2台のバスに乗り換えます。
かつて国鉄広尾線が走っていた頃、途中に愛国駅と幸福駅がありました。1973年放映のNHK番組「新日本紀行」が幸福駅を取り上げたことで知られるようになり、「愛の国から幸福へ」のキャッチフレーズで、愛国駅発幸福駅行の片道切符や、幸福駅の入場券が一大ブームとなりました。
当時、誰もが知るほど知名度が上がった愛国駅と幸福駅ですので、いまも両駅は保存されています。特に幸福駅は駅一帯が観光施設として整備されていて、帯広空港から近いこともあってか、広い駐車場にはいつ行っても観光客の車が停まっていて、観光バスもよくやってきます。
その愛国駅をバス車内から車窓見学したうえで、幸福駅にやってきました。
かつての駅はホームと待合室だけでしたが、それらを取り囲むように整備された広場には、気動車が2両保存されていて、往時の雰囲気を楽しめます。
待合室は老朽化したため近年建て替えられましたが、かつての風情を残していて、違和感はありません。壁一面には、来訪者が記念に貼り付けていった千社札ならぬ幸福札がびつしりついています。
その待合室とホームの間には幸福の鐘が造られていて、周囲に集まった参加者たちは幸せそうな様子で、その雰囲気を楽しんでいます。
幸福駅には20分滞在して、再度バスに乗って池田駅を目指します。この乗車時間も約50分ですので、いまや幸福駅は車がないと訪れづらい地となっています。それだけに、観光ツアーに入れる価値がありましょう。
池田駅に着くと、地元の方々がテントを張って待っていてくださいました。
地元特産のバナナ饅頭は、バナナが珍しかった頃にその味を庶民が楽しめるようにと考案されたものだそうで、たしかに饅頭でありながらバナナの味が楽しめました。
池田町の主力産業となっているワインも、一人一人に一杯ずつ振る舞われます。アルコールが苦手な方にはサイダーも用意されています。
ワインが足らない人向けには、別途有料でワインが用意されましたし、駅前には酒屋さんがあるので、瓶入りでの購入希望者はそちらが案内されます。
アルコールが入ると参加者はより陽気になってきます。わいわいと話ながら、帯広から回送されている貸し切り列車に乗って、15時30分に出発です。ただし、この日は帯広到着直前に地震があったため、列車ダイヤが乱れてやや遅延しての発車となりました。
池田の次は白糠(しらぬか)駅です。池田~白糠間の距離は76. 8kmで、特急であれば約1時間で着いてしまいます。しかし、単線を臨時列車で走るため、定期列車の合間を縫う形となり所要約2時間の予定でした。ところが地震の影響で対抗してくる特急が30分遅れでやってきたため、どうなることかと思いましたが、4分延で到着することができました。
その白糠駅で待っていたのは、祭囃子でした。賑やかな音につられるかのように参加者達が跨線橋を渡ったところでは、大漁旗があがり、地元に伝わる白糠駒踊りが披露されていました。
さらに駅前に行くと、地元名産のししゃもを炭火で焼いたものと紫蘇焼酎「鍛高譚(たんたかたん)」が振る舞われます。このししゃもは、脂がのって美味! それもそのはず、翌週となる11月11日は「白糠ししゃもの日」に指定した、ししゃもが最も美味しい時期なのだそうです。ししゃもは日高地方が原産ですが、この時期に北上してきて白糠に到達するそうです。
美味しいししゃもに酒があれば、参加者のテンションも上がるというものです。
わいわいとやっているうちに17時32分の発車時間となり、白糠町の皆さんに見送られながら、今夜の宿泊地である釧路を目指しました。
掲載日:2017年11月10日
観光列車モニターツアー
道東ハイライト・感動本線
ふれあいの旅2泊3日(根室・釧路・石北本線)
が行われました。北海道にも観光列車を走らせることで、路線の維持と地域経済活性化を図ることを目的としたもので、モニター結果をもとに、この先の観光列車をいかに設定すると良いかが判断される見込みです。
同ツアーに筆者は取材で同行しましたので、その様子を、初日から1日ずつ3回に分けてご紹介します。
このツアーは、北海道の「観光列車旅行者動向調査事業」を受託した日本旅行が実施したもので、前週に行われた旭川~稚内往復2コースと、1月に開催される釧網本線日帰り2コースを併せた計3回が予定されています。その3回のなかでも、今回は2泊して道東を一周するという最も規模の大きなツアーで、80名の募集がわずか17分で売り切れる人気となりました。
そのスタートは札幌駅です。
キハ283系特急形気動車4両貸切で、9時53分に発車します。
帯広着12時55分まで、いきなり3時間あまりの長時間乗車となります。そこで、発車後にフォークグループ「福寿草」による車内ミニコンサートが、1号車から順に行われます。これで、ツアー当初特有の緊張感がほぐれた様子です。
ミニコンサートが終わった頃、列車は狩勝峠を越えて十勝平野に入り、新得に停まります。いよいよ道東のはじまりという新得駅では、昼食が積み込まれて、すぐ参加者に配布されました。
新得駅に駅そば店を開いている「せきぐち」が、同本店でこの日のために特別にしつらえてくれた「新得蕎麦」を使った弁当です。せきぐち本店は行列ができる人気店で、その日に打ったそばが無くなると閉店になるため、夕方には食べられなくなるそうです。
駅そばは湯がいて出される暖かい蕎麦だけですが、せきぐち本店では蕎麦の味をしっかりと味わうことができる盛りそばやざるそばもメニューにあります。そのもりそばが、弁当となって昼食に出されたのです。
極太麺で、かみ応えがしっかりとしたもので、これを十勝平野を眺めながら食べるのですから、たまりません。2つついている俵結びは、そばの実を混ぜたもので、まさに「そば弁当」です。
帯広駅では、駅前に停まっている2台のバスに乗り換えます。
かつて国鉄広尾線が走っていた頃、途中に愛国駅と幸福駅がありました。1973年放映のNHK番組「新日本紀行」が幸福駅を取り上げたことで知られるようになり、「愛の国から幸福へ」のキャッチフレーズで、愛国駅発幸福駅行の片道切符や、幸福駅の入場券が一大ブームとなりました。
当時、誰もが知るほど知名度が上がった愛国駅と幸福駅ですので、いまも両駅は保存されています。特に幸福駅は駅一帯が観光施設として整備されていて、帯広空港から近いこともあってか、広い駐車場にはいつ行っても観光客の車が停まっていて、観光バスもよくやってきます。
その愛国駅をバス車内から車窓見学したうえで、幸福駅にやってきました。
かつての駅はホームと待合室だけでしたが、それらを取り囲むように整備された広場には、気動車が2両保存されていて、往時の雰囲気を楽しめます。
待合室は老朽化したため近年建て替えられましたが、かつての風情を残していて、違和感はありません。壁一面には、来訪者が記念に貼り付けていった千社札ならぬ幸福札がびつしりついています。
その待合室とホームの間には幸福の鐘が造られていて、周囲に集まった参加者たちは幸せそうな様子で、その雰囲気を楽しんでいます。
幸福駅には20分滞在して、再度バスに乗って池田駅を目指します。この乗車時間も約50分ですので、いまや幸福駅は車がないと訪れづらい地となっています。それだけに、観光ツアーに入れる価値がありましょう。
池田駅に着くと、地元の方々がテントを張って待っていてくださいました。
地元特産のバナナ饅頭は、バナナが珍しかった頃にその味を庶民が楽しめるようにと考案されたものだそうで、たしかに饅頭でありながらバナナの味が楽しめました。
池田町の主力産業となっているワインも、一人一人に一杯ずつ振る舞われます。アルコールが苦手な方にはサイダーも用意されています。
ワインが足らない人向けには、別途有料でワインが用意されましたし、駅前には酒屋さんがあるので、瓶入りでの購入希望者はそちらが案内されます。
アルコールが入ると参加者はより陽気になってきます。わいわいと話ながら、帯広から回送されている貸し切り列車に乗って、15時30分に出発です。ただし、この日は帯広到着直前に地震があったため、列車ダイヤが乱れてやや遅延しての発車となりました。
池田の次は白糠(しらぬか)駅です。池田~白糠間の距離は76. 8kmで、特急であれば約1時間で着いてしまいます。しかし、単線を臨時列車で走るため、定期列車の合間を縫う形となり所要約2時間の予定でした。ところが地震の影響で対抗してくる特急が30分遅れでやってきたため、どうなることかと思いましたが、4分延で到着することができました。
その白糠駅で待っていたのは、祭囃子でした。賑やかな音につられるかのように参加者達が跨線橋を渡ったところでは、大漁旗があがり、地元に伝わる白糠駒踊りが披露されていました。
さらに駅前に行くと、地元名産のししゃもを炭火で焼いたものと紫蘇焼酎「鍛高譚(たんたかたん)」が振る舞われます。このししゃもは、脂がのって美味! それもそのはず、翌週となる11月11日は「白糠ししゃもの日」に指定した、ししゃもが最も美味しい時期なのだそうです。ししゃもは日高地方が原産ですが、この時期に北上してきて白糠に到達するそうです。
美味しいししゃもに酒があれば、参加者のテンションも上がるというものです。
わいわいとやっているうちに17時32分の発車時間となり、白糠町の皆さんに見送られながら、今夜の宿泊地である釧路を目指しました。
掲載日:2017年11月10日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。