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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

長浜鉄道スクエアで、おもちゃと遊覧鉄道展 [No.H248]

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現存する最古の鉄道駅舎が、長浜鉄道スクエアの入口。日本の鉄道草創期を学ぶことができる。
北陸本線長浜駅から徒歩約3分の地に、右の写真の建物があります。
旧長浜駅舎で、明治15(1882)年に完成した、現存する日本最古の鉄道駅舎です。
日本の鉄道は、明治5年に新橋~横浜間で開業したことはよく知られていますが、それからわずか10年という時に、なぜ長浜の地にこれほど立派な駅舎ができたのでしょう。その理由は、琵琶湖東岸という立地にあります。
明治維新で鉄道を造ろうとしたとき、まずは東京と大阪という人口が多くて経済活動が活発な地に白羽の矢が立ったのは当然のことでしょう。実際、新橋~横浜間が開通した2年後には大阪~神戸間が開業しています。
これらの鉄道が成功すると、次は江戸五街道のうち2つの街道が結んでいた関東~関西を結ぶ鉄道を考えます。2つの街道とは東海道と中山道です。当初、中山道沿いに鉄道を敷設する中山道幹線の予定でしたが、勾配に弱い鉄道が碓氷峠をいかに越えるかが解決できず、東海道線を敷設することになった経緯があります。
また、一気に東京~大阪間を結ぶのは予算・時間の両面で厳しいことから、江戸時代までに発達していた高速大量輸送手段である舟運を利用することになりました。つまり、琵琶湖沿いの線路敷設は後回しにして、東端の長浜から西端の大津までは船で結ぶことにしたのです。
さらに、長浜は北陸の敦賀に近い立地のため、いまの北陸本線を建設することになりました。その結果、明治15年に北陸本線の長浜~柳ヶ瀬間と柳ヶ瀬トンネル西口~金ヶ崎(後の鶴賀港)間が開業します。柳ヶ瀬トンネルは、滋賀県と福井県の県境を越えるトンネルで、完成に時間を要するためにトンネル前後までを先行して仮開業したのでした。
翌明治16年には、東海道線の長浜~関ヶ原間が開業します。当時、東海道線も米原経由ではなく長浜に関ヶ原からほぼまっすぐ敷設されました。その廃線跡は、いま国道365号線と滋賀県道37号線の一部になっています。
つまり、当時の長浜駅は、東海道線と北陸線の旅客・貨物が琵琶湖の連絡船に乗り換える一大ターミナルだったのです。それだからこそ、これほど立派な駅舎ができたのでした。ちなみに、この琵琶湖の太湖汽船が、日本初の鉄道連絡船です。


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「おもちゃ鉄道と遊覧鉄道展」の展示物の一部。懐かしさあふれる鉄道のおもちゃの数々が展示されている。
前置きが長くなってしまいました。
日本最古の現存駅舎である旧長浜駅舎の旧改札口を抜けると、そこにはプラットホーム…があれば良いのですが、残念ながら他に駅跡の痕跡はありません。
旧改札口の先には、旧駅時代の資料等を展示する「長浜鉄道文化館」と、北陸本線で活躍した機関車等を保存する「北陸線電化記念館」があります。これらと旧長浜駅舎を総称して「長浜鉄道スクエア」と呼んでいるのです。
そのうちの「長浜鉄道文化館」では、9月30日まで企画展「おもちゃ鉄道と遊覧鉄道展 ~せんろ商会コレクション~」が開催されています。左上の写真にある、昔懐かしい鉄道のおもちゃの数々が展示されていますが、なかには700系ドクターイエローらしきものもありますので、必ずしも古いものばかりではないようです。
筆者は、つい一つ一つに見入ってしまいましたが、長浜観光協会の担当者によると、中高年者は同じようにノスタルジーで見るそうです。一方、若者はレトロ感を感じて見入っているということです。なるほど、たしかに昭和っぽいですよね、どれも。


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展示品は日本のものばかりではなく、国際色豊か。写真の最上部はインド製の高架路面電車か?
今回の展示を手がけているのは、実物からおもちゃまで、あらゆる鉄道に関する物を扱っている「せんろ商会」です。よくぞここまでと思うほど、多種多様な鉄道のおもちゃをコレクションしていることに驚きます。
なかでも異彩を放っていたのが、右の写真の最上部に写っているおもちゃ。トンネルらしき高架線路? を取り付けて、路面電車風の車両が載っています。ブリキ製で、車両はゼンマイで動くそうです。それでいて、古いものではなく、最近になって作られているもののようだとのこと。それを、都内の輸入雑貨専門店で見つける眼力もすごいと思います。

この「おもちゃ鉄道と遊覧鉄道展 ~せんろ商会コレクション~」も含む長浜鉄道スクエアは、年末年始を除いて無休で、9:30~17:00の開館。ただし、入館は16:30までとなっています。入館料は大人300円、小中学生150円とお手頃です。
さらに、長浜鉄道スクエアの向かいにある「慶雲館」という明治天皇が休憩されるために建てられた庭園付きの純和風建築の内部では、8月31日まで「おもちゃで遊ぼう夏休み ~新幹線・電車・はたらく車~」を開催中です。入館料は長浜鉄道スクエアと同額ですが、両館のセット券だと大人500円、小中学生250円と少しお得です。
一人でも、家族連れでも楽しめる長浜鉄道スクエアに、今夏訪れてみてはいかがでしょうか。


掲載日:2017年08月04日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。