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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

まごころ列車「おばこ号」、毎日運転中! [No.H196]

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おばこ姿で活躍するアテンダントさん。観光客への沿線案内などを、笑顔で丁寧にしてくださる。
秋田県南部を走る由利高原鉄道は、全線23. 0kmの第三セクター鉄道です。鳥海山ろく線の線名のとおり、鳥海山を眺めながら、同山のふもとを走っています。
由利高原鉄道については、3年半前となる2013年1月25日の当コラムで

   タブレット交換が見られる由利高原鉄道

として紹介しています。
この前郷駅でのタブレット交換とともに、この鉄道の特長として挙げられるのが『まごころ列車』の存在でしょう。
由利高原鉄道は全列車を「おばこ号」と呼んでいます。「おばこ」は、娘さんを意味する東北地方の言葉です。『まごころ列車』は、伝統的なおばこ姿をしたアテンダントさんが乗務する列車です。
通常、この手の列車は特別料金がかかったり、運行する日が限られていたりします。しかし、由利高原鉄道の『まごころ列車』は、普通乗車券だけで乗ることができる定期列車です。
毎日、矢島駅 9:56発→10:37着 羽後本荘駅 10:46発→11:25着
矢島駅という一往復の運行です。この列車は、朝の通学列車を終えたあとの時間で、JR羽越線と接続する羽後本荘駅10:46発は、古くからの町並みが残る矢島を観光する方が多く乗車する列車だそうです。


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『まごころ列車』車内では、車内販売にはじまり、沿線案内、イベント案内、さらには下車客のお見送りと大忙し。
左の写真は、車内前方の電光掲示板に「羽後本荘行、おばこ号でございます。」と表示されているところを写したものに、アテンダントさん活躍の様子を加えたものです。
ご覧の通り、アテンダントさんはワゴンを使った車内販売にはじまり、要所要所で沿線案内をします。一般的な観光案内はもちろんのこと、観光ガイドなどには載っていない地元密着の情報や、季節にあわせた車窓案内など、地元の方ならではの内容が聞けるのもうれしいところです。
この日、筆者は『まごころ列車』乗車後に行く予定の西滝沢駅で、昼食に困ったなと思っていました。ところが、この沿線案内で駅近くに西滝沢水辺プラザ地域交流施設があり、昼時は格安の食べ物を売っていることを知りました。行ってみると、パック入焼きそば100円、おにぎり2個で100円という安さ! ネット地図にもでていない情報を得られて、とてもありがたかったのでした。
さらに、アテンダントさんはイベント列車など自社商品のPRもしっかりとするほか、手作りの乗車記念しおりを乗客一人一人に手渡ししてくれるなど、片道約40分の車内であれもこれもと大活躍です。
終着駅では、下車客を出入口扉のところで笑顔でお見送りもしてくれます。


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まごころ列車(左)と、エボルタ電池鉄道ラッピング車(右)の交換風景。前郷駅にて。
『まごころ列車』は、通常車両を使用した定期列車ですが、右の写真のとおり「まごころ列車」のヘッドマークを掲げます。
このYR-2001号車はいま由利本荘市に隣接するにかほ市出身の木版画家、池田修三氏の作品をラッピングした車両となっています。ですから、通常は「SHUZO IKEDA」と記したヘッドマークをつけています。しかし、まごころ列車の一往復だけは「まごころ列車」のヘッドマークにしています。
なかなか、きめ細やかな対応ですよね。

ところで、右側に停まっている「エボルタ電池鉄道」ラッピング車は、YR-2002号車です。
昨2015年11月3日に、埼玉県立川越工業高校電気科電車班の生徒13人が作った単一乾電池「エボルタ」600本で動かす「エボルタ電池鉄道」が、由利高原鉄道の線路を使ってギネス記録に挑戦しました。
同日、みごとに20kmを越える乾電池でのギネス世界最長距離の記録を出した記念として、今年3月30日から2年間の予定で運転されているラッピング車です。

由利高原鉄道へ行くなら、『まごころ列車』の時間に合わせていくのがお得ですよ。


掲載日:2016年07月15日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。