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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
腕木式信号機がいまも活躍している津軽鉄道 [No.H167]
腕木式信号機を見たことがありますか?
右の写真に写っている、白い柱の上部に赤い「腕」がついている信号機です。
いまや、電気で赤・青・黄色などを表示する色灯式信号機が、道路交通だけでなく鉄道でも一般的になっています。しかし、電気が普及する以前からある鉄道では、機械的に動かす腕木式信号機を使用していたのです。
しかし、電気式に比べて遠隔操作に適していないとか、保守に手間がかかるといったことがあり、次第に色灯式信号機に交換されていきました。
いま、旅客鉄道で腕木式信号機を使用しているのは、津軽鉄道だけとなっています。右の写真は、その津軽鉄道の中間にある交換駅・金木駅に進入する列車を撮影したものです。
この腕木式信号機を過ぎるとレールが分岐するポイントがあり、対向列車と行き違いができる金木駅ホームへと進むわけです。
左の写真は、同じ腕木式信号機を列車進入前と後で撮り比べたものです。
左が、駅に列車が進入する前で「進行」…つまり青信号の状態です。
「腕」が上がっている右は、駅に列車が進入した後のもので、「停止」…つまり、赤信号の状態です。
ちなみに、昼間はよく見える腕木ですが、日が暮れると見えなくなってしまいます。そのために、腕の根元の先に黒い三角形のものがついています。画像をクリックして拡大すると、その三角形のものも見られます。
三角形のものは、なかに丸い形が上下に二つあることが見て取れると思います。上の丸が赤色で、下の丸が緑色になっています。この三角形のものの中に電球が入っていて、夜になると点灯します。その電球は動かず、「腕」が下がっているときは緑の丸が、「腕」が上がっているときには赤の丸が電球の場所に来ます。つまり、色灯式信号になるわけですね。
その電気を取り入れるために、腕木式信号機の左側に木製の電化柱が建っていて、電線が腕木式信号機に届いていることも見て取れると思います。
ちなみに、電気が通っていなかった頃は、夕闇が迫ると、係の方がカンテラをもって腕木式信号機に登り、電球のところに置いていたそうです。冬場など、さぞ大変な仕事だったことでしょう。
かつて、腕木式信号機とセットとなっていたものに、駅ホームでの通票授受がありました。
通票というのは、列車用の通行手形のことで、これをもっている列車だけが、指定された区間を走ることができるものです。その指定された区間を「閉塞(へいそく)」と呼んでいます。
単線鉄道では、線路が一本しかありませんので、同じ区間に逆方向に走る列車があると避けられません。そのような事故を避けるために、鉄道には「閉塞」という概念が取り入れられています。
この「閉塞」は、複線以上の路線にも応用されていて、先行する列車に追突しないようにしています。通勤列車に乗っていると、車内アナウンスで前の列車に続いているので徐行するとか止まると伝えられることがありますが、この閉塞方式で安全を確保しているわけです。
閑話休題
写真の駅員さんは、棒状のものを運転士さんに渡していますよね。これは、「票券」と呼ばれる通票の一種です。これを運転士さんが受け取ることで、金木~津軽中里間を走ることができるようになります。
票券閉塞はあまり馴染みのない用語ですが、スタフ閉塞が進化したもので、タブレット閉塞の前段階と考えて良いでしょう。
ちなみに、同じ津軽鉄道でも、五所川原~金木間はタブレット閉塞となっていますので、タブレット(通票)を入れた大きな輪のあるものを運転士に渡します。
金木駅は、太宰治の生地「斜陽館」がある観光地です。
津軽鉄道には、毎年12月から3月まで、車内にダルマストーブを載せて石炭を焚く「ストーブ列車」が走っています。
これらを目的に津軽鉄道に行くなら、今回ご紹介した腕木式信号機、それにタブレット・票券の授受もぜひ見てきて下さいね。
掲載日:2015年12月11日
右の写真に写っている、白い柱の上部に赤い「腕」がついている信号機です。
いまや、電気で赤・青・黄色などを表示する色灯式信号機が、道路交通だけでなく鉄道でも一般的になっています。しかし、電気が普及する以前からある鉄道では、機械的に動かす腕木式信号機を使用していたのです。
しかし、電気式に比べて遠隔操作に適していないとか、保守に手間がかかるといったことがあり、次第に色灯式信号機に交換されていきました。
いま、旅客鉄道で腕木式信号機を使用しているのは、津軽鉄道だけとなっています。右の写真は、その津軽鉄道の中間にある交換駅・金木駅に進入する列車を撮影したものです。
この腕木式信号機を過ぎるとレールが分岐するポイントがあり、対向列車と行き違いができる金木駅ホームへと進むわけです。
左の写真は、同じ腕木式信号機を列車進入前と後で撮り比べたものです。
左が、駅に列車が進入する前で「進行」…つまり青信号の状態です。
「腕」が上がっている右は、駅に列車が進入した後のもので、「停止」…つまり、赤信号の状態です。
ちなみに、昼間はよく見える腕木ですが、日が暮れると見えなくなってしまいます。そのために、腕の根元の先に黒い三角形のものがついています。画像をクリックして拡大すると、その三角形のものも見られます。
三角形のものは、なかに丸い形が上下に二つあることが見て取れると思います。上の丸が赤色で、下の丸が緑色になっています。この三角形のものの中に電球が入っていて、夜になると点灯します。その電球は動かず、「腕」が下がっているときは緑の丸が、「腕」が上がっているときには赤の丸が電球の場所に来ます。つまり、色灯式信号になるわけですね。
その電気を取り入れるために、腕木式信号機の左側に木製の電化柱が建っていて、電線が腕木式信号機に届いていることも見て取れると思います。
ちなみに、電気が通っていなかった頃は、夕闇が迫ると、係の方がカンテラをもって腕木式信号機に登り、電球のところに置いていたそうです。冬場など、さぞ大変な仕事だったことでしょう。
かつて、腕木式信号機とセットとなっていたものに、駅ホームでの通票授受がありました。
通票というのは、列車用の通行手形のことで、これをもっている列車だけが、指定された区間を走ることができるものです。その指定された区間を「閉塞(へいそく)」と呼んでいます。
単線鉄道では、線路が一本しかありませんので、同じ区間に逆方向に走る列車があると避けられません。そのような事故を避けるために、鉄道には「閉塞」という概念が取り入れられています。
この「閉塞」は、複線以上の路線にも応用されていて、先行する列車に追突しないようにしています。通勤列車に乗っていると、車内アナウンスで前の列車に続いているので徐行するとか止まると伝えられることがありますが、この閉塞方式で安全を確保しているわけです。
閑話休題
写真の駅員さんは、棒状のものを運転士さんに渡していますよね。これは、「票券」と呼ばれる通票の一種です。これを運転士さんが受け取ることで、金木~津軽中里間を走ることができるようになります。
票券閉塞はあまり馴染みのない用語ですが、スタフ閉塞が進化したもので、タブレット閉塞の前段階と考えて良いでしょう。
ちなみに、同じ津軽鉄道でも、五所川原~金木間はタブレット閉塞となっていますので、タブレット(通票)を入れた大きな輪のあるものを運転士に渡します。
金木駅は、太宰治の生地「斜陽館」がある観光地です。
津軽鉄道には、毎年12月から3月まで、車内にダルマストーブを載せて石炭を焚く「ストーブ列車」が走っています。
これらを目的に津軽鉄道に行くなら、今回ご紹介した腕木式信号機、それにタブレット・票券の授受もぜひ見てきて下さいね。
掲載日:2015年12月11日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。