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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

日本一短いトンネルを求めて、北へ西へ… [No.H115]

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日本一短いトンネルだった、吾妻線樽沢トンネル7.2m。木々に覆われて、その長さは判りにくかった。
日本で一番短いトンネルとして知られていた、吾妻(あがつま)線の樽沢トンネル7.2mが、去る9月25日に廃止されました。民主党政権下で建設が凍結されながら、結局、建設が再開された八ッ場(やんば)ダムの事前準備工事が終わり、いよいよ本体工事に着手することになったためです。
樽沢トンネルを含む吾妻線岩島~川原湯温泉間には、吾妻渓谷の対岸の山中を抜ける新線が完成し、代行バス輸送を経て、10月1日から新線での運転が始まっています。同時に川原湯温泉駅も高台の新線に移転し、その長野原草津口側で旧線と合流することになりました。
廃止前には多くの方が訪れた樽沢トンネルですが、近年、トンネルまわりに木々が茂り、沿道からはその短さを実感しにくくなっていました。一方、走る列車内にいると、あまりの短さにトンネルをくぐったかどうか判然としない思いをさせられたものです。
なお、八ッ場ダム本体は旧・川原湯温泉駅近くに建設されるため、樽沢トンネル付近がダム湖に沈むわけではありません。沿線には渓谷美と紅葉で知られる吾妻渓谷もあるだけに、廃線跡を活用してトロッコ列車を走らせるなどする価値があるように思われますが、いまのところ具体的な動きは聞こえてきていません。



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五能線の仙北岩トンネル9.5mは、JR東日本で一番短いトンネルとなった。でも、日本一ではない…
樽沢トンネル廃止の報道のなかに、次に最短トンネルとなるのは、JR東日本五能線の仙北岩トンネル9.5mという報道がありました。群馬県から青森県に最短が移動したのです。そこで、その様子を見に行ってみました。
五能線は、世界遺産の白神山地を避けるようにして日本海沿いを走る路線で、その海の眺めのすばらしさが知られています。以前は単なるローカル線だったのですが、いまでは日本海を眺めつつ白神山地を訪れる観光客を運ぶ「リゾートしらかみ」が、観光シーズンには1日3往復走り、冬場でも週末を中心に1日2往復が走る観光路線となっています。
仙北岩トンネルは、そんな五能線らしい場所にありました。入江沿いの線路が海に突き出した岩を抜けているのです。同トンネルの弘前側にはさらに長いトンネルが続いているので、乗っていると一つのトンネルと感じるのではないかと思われます。山がせまる場所で海に沿った五能線を象徴するような光景ですから、これに最短トンネルの冠が加わって、これから人気が出るものと思います。
ところが、その最短トンネルの報には「JR東日本として」の一文がついていました。つまり、日本一ではないのです。



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9月25日から日本一短いトンネルとなった、呉線の川尻トンネル8.7m。上が道になっていて、トンネルらしくない…
樽沢トンネルに代わって日本一短いトンネルとなったのは、JR西日本呉線の川尻トンネル8.7mです。そこで、ここへも行ってみました。こんどは、広島県です。
音戸ノ瀬戸や戦艦大和など、古くから瀬戸内海の港町として知られる呉市内にあるトンネルですが、呉駅からは東(三原側)へ5駅目の安芸川尻駅が最寄り駅となります。ただし、3駅目の広駅までの列車は多いものの、その先は日中1時間に1本と列車本数が減ります。ちなみに、広→仁方→安芸川尻の順に駅がありますが、まん中の仁方駅は、以前、四国の堀江への国鉄連絡線仁堀航路がでていたときの本州側接続駅でした。筆者も、四国周遊券をもって仁方駅から港まで歩いた記憶があります。
さて、安芸川尻駅で下車すると、三原側の構内外れに目指す川尻トンネルがありました。でも、見たところ跨線橋じゃないの? といった感じで、ここまでに記してきた2トンネルと比べて、どうも感動が薄い印象です。実際、トンネル上は旧道だったようで、いまは歩道になっていました。さらに、その歩道に隣接して2車線の道路があり、川尻トンネルの三原側はその道路の跨線橋が続いています。つまり、パッと見では、トンネルと跨線橋が連続して一つの跨線橋になっている感じなのです。
それでも、よく見るとトンネルポータルは馬蹄形をしていて、跨線橋部分とは断面が違います。また、トンネル出口左右の斜面は石積みとなっていて、もともとトンネルポータルも連続する石積みであったであろうことも感じられます。これが、日本最短トンネルの現状でした。




掲載日:2014年11月21日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。