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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
日本一低い駅へ行く、本州最北端の鉄道線 [No.H105]
日本一低い駅というと、2013(平成25)年までは青函トンネル内の竜飛海底駅でした。しかし、同駅は同年11月10日をもって使用を終え、翌2014(平成26)年3月15日付で廃止されました。では、その後の日本一低い駅はというと…なんと、相変わらず青函トンネル内です。それも、竜飛海底駅から歩いて行けるところにある、体験坑道駅という変わった名前の駅です。
この体験坑道駅は、竜飛岬の近くの地上にある「青函トンネル記念館」に併設されているケーブルカーの駅です。ケーブルカーは鋼索鉄道という鉄道線ですので、本州最北端の鉄道線です。元はといえば、青函トンネルを掘るために、いち早く掘り始めた青森県側の斜坑です。この斜坑を使って人と物資が出入りすることで、先進導抗や本坑などが掘り進められました。そのためにケーブルカーがあったのですが、青函トンネル完成後は保守点検と非常時の避難用にこの斜坑が残されています。その斜坑を走るケーブルカーを一般開放しているというわけです。
青函トンネル記念館~体験坑道間は778mと短いため、上の写真にあるセイカン1「もぐら」号1両だけが在籍しています。京都の鞍馬寺にある鞍馬山鋼索鉄道とともに、日本一在籍車両数の少ない鉄道です。
青函トンネル記念館公式サイト
青函トンネル記念館のケーブルカーは、「青函トンネル竜飛斜坑線」が正式名称です。レールの幅(軌間=ゲージ)は914mmという、珍しい軌間を使用しています。青函トンネルは1988(昭和63)年3月13日の開業ですが、このケーブルカーは一足遅れた同年7月9日に開業しています。青函トンネル開業後も工事の残務があって、観光客受け入れまでに約4カ月を要したということでしょう。
乗車するには、青函トンネル記念館で体験坑道乗車券を購入します。大人1,000円、小人500円ですが、記念館入場券大人400円、小人200円とのセット券大人1,300円、小人650円もあります。冬が厳しい土地ですので、開館日は毎年4月25日~11月10日(以上、いずれも2014(平成26)年実績)となっています。その代わり期間中は無休で、8時40分から17時までの開館です。ケーブルカーは9時00分発から平日50分毎、多客時25分ごとの運転で、定期便の最終は16時30発となっています。
乗ると、ゆっくりゆっくりと下りはじめ、体験坑道駅まで8分を要します。778mを8分かけるわけですから、いかにゆっくりした速度かが想像できると思います。なお、復路の登りは所要7分です。
斜坑内の線路は単線ですが、並行して階段がついています。この斜坑を非難路として使用する際に、電気系統が使えなければ歩いて地上に出るしかありません。そのための階段です。配管や配線もある、物々しい斜坑内部は、いかにも“現場”の様相で、体験坑道駅近くには分岐線もあります。
到着した体験坑道駅は、地下140mに位置している日本で一番低い鉄道駅です。ここでは、乗客全員の前後に係員がついて坑道見学をします。青函トンネルについて解説しつつ進む途中には、青函トンネル掘削に使用した機材や道具が展示されています。そのうちトロッコについては、ちゃんとレールに載った状態で展示してあります。
日本のトンネル掘削技術は青函トンネルによって飛躍的に進歩して、世界最先端に上り詰めたと言われていますが、そんな技術も、展示物とともに判りやすく解説して下さいます。さらに、パネルでの建設過程の案内もあり、真剣に見聞きしていけば、ここに来るだけで青函トンネルの概要が理解ことできるでしょう。
体験坑道の案内は、体験坑道駅から数百mのところで折り返します。その折り返し地点には柵があり「立入禁止」の札があります。この先に、2013年まで列車で見学に来ていた人たちが乗降した竜飛海底駅があるのです。北海道新幹線の工事で狭いホームがさらに削られることになり、通常使用は危険ということで見学コースの廃止が決まりました。いずれ、北海道新幹線で再びこの体験坑道を見学に訪れられるようにして欲しいですよね。
この柵の前でしばし自由時間となります。再び集合してケーブルカーに乗り、青函トンネル記念館に戻ると解散です。ケーブルカー乗車から体験坑道見学して解散までの所要時間は、約45分です。
なお、青函トンネル記念館へは、JR東日本津軽線三厩(みんまや)駅で接続している三厩地区循環バスで30分。青函トンネル記念館下車となります。そのバス時刻は、外ケ浜町の公式サイト内、「くらしの情報」→「交通」→「三厩地区バス」で知ることができます。
掲載日:2014年09月12日
この体験坑道駅は、竜飛岬の近くの地上にある「青函トンネル記念館」に併設されているケーブルカーの駅です。ケーブルカーは鋼索鉄道という鉄道線ですので、本州最北端の鉄道線です。元はといえば、青函トンネルを掘るために、いち早く掘り始めた青森県側の斜坑です。この斜坑を使って人と物資が出入りすることで、先進導抗や本坑などが掘り進められました。そのためにケーブルカーがあったのですが、青函トンネル完成後は保守点検と非常時の避難用にこの斜坑が残されています。その斜坑を走るケーブルカーを一般開放しているというわけです。
青函トンネル記念館~体験坑道間は778mと短いため、上の写真にあるセイカン1「もぐら」号1両だけが在籍しています。京都の鞍馬寺にある鞍馬山鋼索鉄道とともに、日本一在籍車両数の少ない鉄道です。
青函トンネル記念館公式サイト
青函トンネル記念館のケーブルカーは、「青函トンネル竜飛斜坑線」が正式名称です。レールの幅(軌間=ゲージ)は914mmという、珍しい軌間を使用しています。青函トンネルは1988(昭和63)年3月13日の開業ですが、このケーブルカーは一足遅れた同年7月9日に開業しています。青函トンネル開業後も工事の残務があって、観光客受け入れまでに約4カ月を要したということでしょう。
乗車するには、青函トンネル記念館で体験坑道乗車券を購入します。大人1,000円、小人500円ですが、記念館入場券大人400円、小人200円とのセット券大人1,300円、小人650円もあります。冬が厳しい土地ですので、開館日は毎年4月25日~11月10日(以上、いずれも2014(平成26)年実績)となっています。その代わり期間中は無休で、8時40分から17時までの開館です。ケーブルカーは9時00分発から平日50分毎、多客時25分ごとの運転で、定期便の最終は16時30発となっています。
乗ると、ゆっくりゆっくりと下りはじめ、体験坑道駅まで8分を要します。778mを8分かけるわけですから、いかにゆっくりした速度かが想像できると思います。なお、復路の登りは所要7分です。
斜坑内の線路は単線ですが、並行して階段がついています。この斜坑を非難路として使用する際に、電気系統が使えなければ歩いて地上に出るしかありません。そのための階段です。配管や配線もある、物々しい斜坑内部は、いかにも“現場”の様相で、体験坑道駅近くには分岐線もあります。
到着した体験坑道駅は、地下140mに位置している日本で一番低い鉄道駅です。ここでは、乗客全員の前後に係員がついて坑道見学をします。青函トンネルについて解説しつつ進む途中には、青函トンネル掘削に使用した機材や道具が展示されています。そのうちトロッコについては、ちゃんとレールに載った状態で展示してあります。
日本のトンネル掘削技術は青函トンネルによって飛躍的に進歩して、世界最先端に上り詰めたと言われていますが、そんな技術も、展示物とともに判りやすく解説して下さいます。さらに、パネルでの建設過程の案内もあり、真剣に見聞きしていけば、ここに来るだけで青函トンネルの概要が理解ことできるでしょう。
体験坑道の案内は、体験坑道駅から数百mのところで折り返します。その折り返し地点には柵があり「立入禁止」の札があります。この先に、2013年まで列車で見学に来ていた人たちが乗降した竜飛海底駅があるのです。北海道新幹線の工事で狭いホームがさらに削られることになり、通常使用は危険ということで見学コースの廃止が決まりました。いずれ、北海道新幹線で再びこの体験坑道を見学に訪れられるようにして欲しいですよね。
この柵の前でしばし自由時間となります。再び集合してケーブルカーに乗り、青函トンネル記念館に戻ると解散です。ケーブルカー乗車から体験坑道見学して解散までの所要時間は、約45分です。
なお、青函トンネル記念館へは、JR東日本津軽線三厩(みんまや)駅で接続している三厩地区循環バスで30分。青函トンネル記念館下車となります。そのバス時刻は、外ケ浜町の公式サイト内、「くらしの情報」→「交通」→「三厩地区バス」で知ることができます。
掲載日:2014年09月12日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。