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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
大正の名機8620形が誕生して、今年で100年 [No.H100]
この「ひろやすの汽車旅コラム」は、2012年8月24日に第一回がスタートしています。間もなく2年となるわけですが、その2周年を目前とした今回が、100回目のコラムとなりました。そこで、今回は100つながりとして、100年前に誕生した大正の名機8620形蒸気機関車について記します。
【お願い】
今後、より当コラムをお楽しみいただけるようにと、簡単なアンケートを用意しました。 今後の参考にしますので、一人でも多くの方のご協力をお願いいたします。アンケートはこちら
8620形蒸気機関車は、1914(大正3)年に急行旅客列車牽引用として誕生しました。当時は、明治時代に輸入した機関車たちがそろそろ引退の時期を迎える一方で、国産技術が大きく前進していました。そこで、当時の最新技術と、日本の鉄道にあった仕様を織り込んで造られたのが、この8620形です。“ハチロクニ”と呼ばれますが、略して“ハチロク”とも呼ばれます。
先輪1軸と動輪3軸という軸配置1Cで、その先輪と第一動輪(動輪のうち一番前のもの)を結ぶことで、カーブに差しかかると第一動輪が少し横にずれる構造が取り入れられました。この結果、カーブを高速で通過できるようになったのですが、その考案者は島安二郎氏でした。国産蒸気機関車の最高傑作といわれるD51や東海道新幹線の設計に関わったことで知られる、島秀雄氏の実父です。
その8620形は、初年度となる1914年に46両が造られて以降、1929(昭和4)年までに総数687両も製造されました。前年となる1913(大正2)年から製造が始まった貨物用の9600形が、総数770両造られていて、この8620形と9600形が大正時代を代表する名機と言われています。その第1号となる8620号機は、東京都青梅市にある青梅鉄道公園に保存されています。ちなみに、この両機の製造数を抜いた蒸気機関車は、唯一D51形だけで、1115両製造されました。
日本を代表する蒸気機関車の保存展示施設として知られる、京都の梅小路蒸気機関車館にも、もちろん8620形と9600形がいます。8620形は8630号機で、青梅の8620号機から数えて11両目となる機関車ですが、いまでも動くことができる動態保存機です。
左の写真は、機関助士席側の斜め後ろからみた8630号機です。動輪とボイラーの間にある白く塗られたランボードが、前部と運転室下で曲線を描いている様子が分かります。煙突の上部が皿状に開いた“飾り煙突”とともに、大正時代の機関車に見られる凝った意匠です。もちろん、9600形にも同様な意匠が見られますし、登場当初9900形だったD50形や、18900形だったC51形にも見られます。しかし、昭和になって設計された機関車には見られない特徴です。梅小路蒸気機関車館に行ったら、こんなところも見てきたいものです。
8620形の動輪は直径が1600mmです。貨物用の9600形は1250mmですから、その大きさの違いが良く分かります。ちなみに、D51形は1400mm、貨客両用の昭和時代の標準タンク機C11形は1520mmですから、8620形は大正時代としては大きな動輪であることが判ります。なお、C51形以降の特急・急行用旅客機はすべて1750mmでした。
掲載日:2014年08月08日
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8620形蒸気機関車は、1914(大正3)年に急行旅客列車牽引用として誕生しました。当時は、明治時代に輸入した機関車たちがそろそろ引退の時期を迎える一方で、国産技術が大きく前進していました。そこで、当時の最新技術と、日本の鉄道にあった仕様を織り込んで造られたのが、この8620形です。“ハチロクニ”と呼ばれますが、略して“ハチロク”とも呼ばれます。
先輪1軸と動輪3軸という軸配置1Cで、その先輪と第一動輪(動輪のうち一番前のもの)を結ぶことで、カーブに差しかかると第一動輪が少し横にずれる構造が取り入れられました。この結果、カーブを高速で通過できるようになったのですが、その考案者は島安二郎氏でした。国産蒸気機関車の最高傑作といわれるD51や東海道新幹線の設計に関わったことで知られる、島秀雄氏の実父です。
その8620形は、初年度となる1914年に46両が造られて以降、1929(昭和4)年までに総数687両も製造されました。前年となる1913(大正2)年から製造が始まった貨物用の9600形が、総数770両造られていて、この8620形と9600形が大正時代を代表する名機と言われています。その第1号となる8620号機は、東京都青梅市にある青梅鉄道公園に保存されています。ちなみに、この両機の製造数を抜いた蒸気機関車は、唯一D51形だけで、1115両製造されました。
日本を代表する蒸気機関車の保存展示施設として知られる、京都の梅小路蒸気機関車館にも、もちろん8620形と9600形がいます。8620形は8630号機で、青梅の8620号機から数えて11両目となる機関車ですが、いまでも動くことができる動態保存機です。
左の写真は、機関助士席側の斜め後ろからみた8630号機です。動輪とボイラーの間にある白く塗られたランボードが、前部と運転室下で曲線を描いている様子が分かります。煙突の上部が皿状に開いた“飾り煙突”とともに、大正時代の機関車に見られる凝った意匠です。もちろん、9600形にも同様な意匠が見られますし、登場当初9900形だったD50形や、18900形だったC51形にも見られます。しかし、昭和になって設計された機関車には見られない特徴です。梅小路蒸気機関車館に行ったら、こんなところも見てきたいものです。
8620形の動輪は直径が1600mmです。貨物用の9600形は1250mmですから、その大きさの違いが良く分かります。ちなみに、D51形は1400mm、貨客両用の昭和時代の標準タンク機C11形は1520mmですから、8620形は大正時代としては大きな動輪であることが判ります。なお、C51形以降の特急・急行用旅客機はすべて1750mmでした。
この大正の名機が走る姿を見たい、乗りたいと思ったら、九州に行くことで実現できます。JR九州が熊本~人吉間で走らせている「SL人吉」号の牽引機が、8620形の58654号機なのです。5万台の数字って、ずいぶんなインフレ番号ですよね。実は、8620形の性能が良いために増備を続けたところ、8699号機の次で困りました。というのも、8700形がすでにあったのです。そこで、百番台になるハズの数字を万番台にもってきて、8699号機の次を18620号機としたのです。このように変則番号となったため、最後に新製された8620形は、88651号機でした。
「SL人吉」号は、3月中旬から11月までの週末を中心に、熊本~人吉間を1日1往復しています。3両の客車を牽引しますが、いずれも、鉄道車両デザイナーとして知られる水戸岡鋭冶氏による改造がされているため、楽しく居心地のよい室内となっています。最前部と最後部にはフリースペースの展望ラウンジがあり、とても人気があります。「SL人吉」号自体が人気列車で、指定席券を取りづらいということをよく聞きます。それだけに、出かけるのであれば、1カ月前の発売日に指定席券を確保しておきたいところです。
★100回記念アンケートはこちら
掲載日:2014年08月08日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。