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- [No.H288] 大阪市営地下鉄は、民営化して Osaka Metro に
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
ホーム中央を突き抜ける大木のある駅:京阪萱島駅 [No.H088]
京阪電気鉄道は、淀川の左岸に沿って京都~大阪を結ぶ京阪本線を軸とする大手私鉄です。その大阪府内に萱島駅があります。パナソニックの創業の地である門真市の東隣に位置する寝屋川市内の駅です。京阪本線は、大阪環状線内にある天満橋からこの寝屋川までの11.5kmが複々線となっていて、私鉄としては東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)北千住~北越谷間18.9kmに次ぐ、国内二番目の複々線距離となっています。
その萱島駅を複々線化するに際しては、同時に高架化もしました。そのために、線路沿いでは用地拡幅を進めていったわけですが、萱島駅では地元住民から要望がありました。線路沿いに生えている樹齢700年といわれる楠の大樹を切らないで欲しい…と。それほど、この楠が地元で親しまれた存在だったということでしょう。
京阪電気鉄道は、その地元の意を汲み取って、楠を囲むようにホームを設置するという異例の対応をしました。それが、右上の写真にみえる楠です。大阪方面の島式ホームのど真ん中を、大樹が貫いています。この部分は、ご覧の通り屋根も張ってなく、楠は太陽の光を思う存分に浴びています。
では、ホーム下はどうなっているのでしょう? 気になって、萱島駅で下車してみました。改札をでて京都側に進むと、すぐに大楠のあたりです。すると、そこには萱島神社の境内がありました。左の写真のように、なかなかしっかりとした参道と鳥居がある神社で、傍らには無人ながら社務所もあります。そこから見上げると、電車の停まっているホームの屋根の上には、大楠の茂った枝葉が見えています。まさに大樹ですね。 神社の境内にお邪魔して、その由緒をみると、次の一文がありました。
「昭和四十六年より昭和五十五年の京阪電鉄の高架複々線工事の完成により、同社の寄進を受け再興される」
萱島神社は天明7(1787)年にこの地を開拓した際に創建されたものの、その後廃れていたようです。それを、樹齢700年の楠を存続させると決めた際に、京阪の手によって神社も隣接して再興したということです。
萱島神社の右隣に大楠大明神があり、こちらにも赤い鳥居と御神燈がしっかりと備えられています。その御本尊である楠には、しめ縄が締められています。萱島神社とともにお参りをしたうえで側方に回り込むと、楠の上部が見られました。ホームと屋根を貫いて天に伸びている幹の様子がよくわかります。傍らに寝屋川市の建てた「保存樹」という看板があり、平成2(1990)年4月1日に保存樹に指定したことが判ります。幹の周りは7mで、樹高は20mと記してあります。また、大阪府の「みどりの百選」にも選ばれているそうです。
京都~大阪を移動する際、何気なく見ていた萱島駅の楠ですが、地元の方々の熱意と京阪電気鉄道の協力により、しっかりと後世に残る対策が取られていることが判りました。このような経緯もあってでしょうか、私が訪れたわずかな時間のあいだにも、地元の方々が三々五々と訪れては、お参りをして行かれました。午前中だったからか、若い奥様風の方々だったのも印象的でした。末永く、大切にされ続ける大樹のようです。
今ごろは新緑が生えそろっている頃でしょう。機会があったら、また寄ってみようと思うところでした。
掲載日:2014年05月16日
その萱島駅を複々線化するに際しては、同時に高架化もしました。そのために、線路沿いでは用地拡幅を進めていったわけですが、萱島駅では地元住民から要望がありました。線路沿いに生えている樹齢700年といわれる楠の大樹を切らないで欲しい…と。それほど、この楠が地元で親しまれた存在だったということでしょう。
京阪電気鉄道は、その地元の意を汲み取って、楠を囲むようにホームを設置するという異例の対応をしました。それが、右上の写真にみえる楠です。大阪方面の島式ホームのど真ん中を、大樹が貫いています。この部分は、ご覧の通り屋根も張ってなく、楠は太陽の光を思う存分に浴びています。
では、ホーム下はどうなっているのでしょう? 気になって、萱島駅で下車してみました。改札をでて京都側に進むと、すぐに大楠のあたりです。すると、そこには萱島神社の境内がありました。左の写真のように、なかなかしっかりとした参道と鳥居がある神社で、傍らには無人ながら社務所もあります。そこから見上げると、電車の停まっているホームの屋根の上には、大楠の茂った枝葉が見えています。まさに大樹ですね。 神社の境内にお邪魔して、その由緒をみると、次の一文がありました。
「昭和四十六年より昭和五十五年の京阪電鉄の高架複々線工事の完成により、同社の寄進を受け再興される」
萱島神社は天明7(1787)年にこの地を開拓した際に創建されたものの、その後廃れていたようです。それを、樹齢700年の楠を存続させると決めた際に、京阪の手によって神社も隣接して再興したということです。
萱島神社の右隣に大楠大明神があり、こちらにも赤い鳥居と御神燈がしっかりと備えられています。その御本尊である楠には、しめ縄が締められています。萱島神社とともにお参りをしたうえで側方に回り込むと、楠の上部が見られました。ホームと屋根を貫いて天に伸びている幹の様子がよくわかります。傍らに寝屋川市の建てた「保存樹」という看板があり、平成2(1990)年4月1日に保存樹に指定したことが判ります。幹の周りは7mで、樹高は20mと記してあります。また、大阪府の「みどりの百選」にも選ばれているそうです。
京都~大阪を移動する際、何気なく見ていた萱島駅の楠ですが、地元の方々の熱意と京阪電気鉄道の協力により、しっかりと後世に残る対策が取られていることが判りました。このような経緯もあってでしょうか、私が訪れたわずかな時間のあいだにも、地元の方々が三々五々と訪れては、お参りをして行かれました。午前中だったからか、若い奥様風の方々だったのも印象的でした。末永く、大切にされ続ける大樹のようです。
今ごろは新緑が生えそろっている頃でしょう。機会があったら、また寄ってみようと思うところでした。
掲載日:2014年05月16日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。