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"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!
鉄道文化財をめぐる(6) 余部鉄橋「空の駅」 [No.H050]
近代土木遺産として知られた、山陰本線餘部(あまるべ)~鎧(よろい)間の余部(あまるべ)鉄橋は、老朽化のため2010(平成20)年に併設された新橋に役目を譲りました。1912(明治45)年の竣工ですから、約100年間ものあいだ、風雪に耐えて列車を通してきたものです。それだけに、その後、この鉄橋がどうなるのか…と、多くの方が注目をしていましたが、この8月1日に保存関連の事業がすべて終わりました。今回は、その概要をご紹介します。
右の写真は、現在の余部橋梁です。列車が渡っているのは新設されたコンクリート橋ですが、右下には赤い旧鉄橋の橋脚が見えますよね? また、列車の左側にはなにやら囲いに覆われた通路があります。これらが、今回紹介する保存事業の最たる成果です。
余部鉄橋は山陰海岸沿いにあり、山の斜面が一気に海岸まで落ち込むところに位置しています。このため、海岸を見下ろす高さにある鎧駅を発車した列車は、トンネルを抜けると、いきなり余部鉄橋となります。この鉄橋を渡り終えたところが餘部駅です。
海が間近ですが、鉄橋の下は河口付近の川で、その河床からレール面までは41.45mもあります。また、橋の長さは310.70mです。JRの標準的な車両である20m車だと、15両がすっぽりと載ってしまうような長さです。その特徴は、鋼トレッスル式と呼ばれる、櫓(やぐら)を組んだような形の橋脚が、計11基もあることでした。その真っ赤で独特な形状の橋脚の連続と、眼前に広がる日本海の景色が相俟って、全国的に有名な鉄橋になったわけです。
この橋脚のうち、餘部駅に近い3基が保存されました。また、それに続く2基の橋脚は、地面に近い部分の高さ約8mが残されました。さらに、長さ約18mの橋げたも保存されました。これらは、併設された「道の駅 あまるべ」とともに、観光客向けの施設となっています。
そのうち、保存された3基の橋脚は、その上部にできた「余部鉄橋 空の駅」とともに、今年5月に竣工しています。これは、餘部駅に併設された施設で、駅ホームに沿って鉄橋現役時代の線路が残り、その先が余部鉄橋の上部に続いています。列車で来れば、下車してすぐに目に着く場所です。
その入口部分には、「余部鉄橋 空の駅」の石碑があり、その右側にある急な坂を下りていくと、前述の保存された橋脚が間近に見られ、さらに下りていくと「道の駅 あまるべ」に至るわけです。
「余部鉄橋 空の駅」の石碑の先に続く線路が途切れるところまで歩くと、そこは展望台になっています。細長い展望台で、周囲は金網でガッチリと囲まれているので安全です。その展望台の中央付近には2本の線が描かれています。そう、レールを模したものです。保存されている橋脚の上端に位置しているので、もともと線路があったことを示しているわけです。その先端付近には、腰掛けがありますが、座ってみると足元が網目になっていて、下まで見えます… 下から吹き上がってくる風も感じられて、暖かい季節には涼しいところですが、高所が苦手な方だと冷や汗が出てしまうようです。また、通路の中央には2個所、下が見られるようになっているところがあります。橋脚を上部から観察するための窓です。もちろん、強化ガラスと金網でがっちりガードされているので安全ですが、人によっては避けて通るようです。
このように、「余部鉄橋 空の駅」は季節の良いときに訪れるには絶好の場所で、のんびりと風に吹かれながら日本海の眺めを楽しむことができます。保存された橋脚を観察できるところから、下山する道とは別の道があり、そちらを辿ると、駅とは反対側にある有名撮影地に行けます。今回冒頭に掲げた写真は、ここで撮ったものです。さきほどの道をそのまま下りていけば、前述のとおり「道の駅 あまるべ」があり、昼間であれば食事などもできますし、地場産品をお土産に買うこともできます。
餘部駅には普通列車しか停まらないので、アクセスがいささか不便ですが、その分、混雑することも滅多にありません。しっかりと時間をとって、のんびりと訪れたいところです。
【注】本文中、「あまるべ」の漢字は、駅を「餘部」、その他は「余部」としてあります。現地の表記に沿ったものとして、ご了承下さい。
掲載日:2013年08月09日
右の写真は、現在の余部橋梁です。列車が渡っているのは新設されたコンクリート橋ですが、右下には赤い旧鉄橋の橋脚が見えますよね? また、列車の左側にはなにやら囲いに覆われた通路があります。これらが、今回紹介する保存事業の最たる成果です。
余部鉄橋は山陰海岸沿いにあり、山の斜面が一気に海岸まで落ち込むところに位置しています。このため、海岸を見下ろす高さにある鎧駅を発車した列車は、トンネルを抜けると、いきなり余部鉄橋となります。この鉄橋を渡り終えたところが餘部駅です。
海が間近ですが、鉄橋の下は河口付近の川で、その河床からレール面までは41.45mもあります。また、橋の長さは310.70mです。JRの標準的な車両である20m車だと、15両がすっぽりと載ってしまうような長さです。その特徴は、鋼トレッスル式と呼ばれる、櫓(やぐら)を組んだような形の橋脚が、計11基もあることでした。その真っ赤で独特な形状の橋脚の連続と、眼前に広がる日本海の景色が相俟って、全国的に有名な鉄橋になったわけです。
この橋脚のうち、餘部駅に近い3基が保存されました。また、それに続く2基の橋脚は、地面に近い部分の高さ約8mが残されました。さらに、長さ約18mの橋げたも保存されました。これらは、併設された「道の駅 あまるべ」とともに、観光客向けの施設となっています。
そのうち、保存された3基の橋脚は、その上部にできた「余部鉄橋 空の駅」とともに、今年5月に竣工しています。これは、餘部駅に併設された施設で、駅ホームに沿って鉄橋現役時代の線路が残り、その先が余部鉄橋の上部に続いています。列車で来れば、下車してすぐに目に着く場所です。
その入口部分には、「余部鉄橋 空の駅」の石碑があり、その右側にある急な坂を下りていくと、前述の保存された橋脚が間近に見られ、さらに下りていくと「道の駅 あまるべ」に至るわけです。
「余部鉄橋 空の駅」の石碑の先に続く線路が途切れるところまで歩くと、そこは展望台になっています。細長い展望台で、周囲は金網でガッチリと囲まれているので安全です。その展望台の中央付近には2本の線が描かれています。そう、レールを模したものです。保存されている橋脚の上端に位置しているので、もともと線路があったことを示しているわけです。その先端付近には、腰掛けがありますが、座ってみると足元が網目になっていて、下まで見えます… 下から吹き上がってくる風も感じられて、暖かい季節には涼しいところですが、高所が苦手な方だと冷や汗が出てしまうようです。また、通路の中央には2個所、下が見られるようになっているところがあります。橋脚を上部から観察するための窓です。もちろん、強化ガラスと金網でがっちりガードされているので安全ですが、人によっては避けて通るようです。
このように、「余部鉄橋 空の駅」は季節の良いときに訪れるには絶好の場所で、のんびりと風に吹かれながら日本海の眺めを楽しむことができます。保存された橋脚を観察できるところから、下山する道とは別の道があり、そちらを辿ると、駅とは反対側にある有名撮影地に行けます。今回冒頭に掲げた写真は、ここで撮ったものです。さきほどの道をそのまま下りていけば、前述のとおり「道の駅 あまるべ」があり、昼間であれば食事などもできますし、地場産品をお土産に買うこともできます。
餘部駅には普通列車しか停まらないので、アクセスがいささか不便ですが、その分、混雑することも滅多にありません。しっかりと時間をとって、のんびりと訪れたいところです。
【注】本文中、「あまるべ」の漢字は、駅を「餘部」、その他は「余部」としてあります。現地の表記に沿ったものとして、ご了承下さい。
掲載日:2013年08月09日
●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。
日本海を見下ろす眺めは相変わらずよい。
赤い旧鉄橋の橋脚も保存されている。