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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

映画'RAILWAYS'主演のツリカケ電車を運転しよう! [No.H040]

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映画'RAILWAYS'で活躍したデハニ53。
その車両を、体験運転できる専用線。
貨物ホーム跡の雰囲気がなかなか良い。


2010年に公開された映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」を、ご覧になりましたか? バタデンこと一畑電車を舞台に繰り広げられる人間ドラマです。その主役はベテラン俳優の中井貴一氏でしたが、同じく主役級の演技をしていたのが、一畑電車の古豪デハニ50形でした。当時、デハニ50形は第一線を退いていましたので、映画収録のために営業線上を走ったことは、鉄道趣味界で大いに話題となりました。実際、映画の収録を終えるとともに、営業線上からは完全に消えてしまいました。

そのデハニ50形を運転してみませんか? といったら荒唐無稽な話に聞こえますが、現実にできるのです。というのも、映画に登場したデハニ50形2両のうち、デハニ53号はいまも動くのです。それも、検車庫などがある雲州平田駅の構内端に、150mの体験運転専用線を設けてあり、一般の方を対象にした運転体験を週末を中心に実施しているのです。その運転を筆者も体験してきたので、ここにご紹介します。

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まずは、電車の運転方法などについての講習を受ける。
丁寧なテキストに加えて、ビデオもあって理解し易い。
机にはブレーキハンドルがあって、つい興奮気味に…
一畑電車の公式サイトにある「デハニ50形体験運転」のバナーをクリックすると、体験運転の概要が表示されるほか、申込み方法も詳しく記してあります。予約状況もわかり、申込みもできるようになっています。
当日、予約した時間に雲州平田駅(一部のコースは松江しんじ湖温泉駅)に行くと、改札脇に受付がありました。ここで名前の確認があり、まずは講習です。電車の運転方法について知らなくても大丈夫なように、最初にテキストを使い、続いてビデオを使っての講習です。1時間ほどの内容で、ブレーキの扱いが特に難しいので、丁寧に説明されます。体験運転をしたことがあればすんなりと理解できる内容ですが、初体験だとちょっと消化不良になるかも…。
でも、大丈夫です。構内見学をしたあと、昼食時間に図解入りのテキストで復習をできますから。

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80年以上の時が作った渋い車内。
荷物室に続く運転台の先には、
これから運転する線路が延びている。

いよいよ、デハニ53に乗り込んでの体験運転です。
講習に参加しなければ入ることができない、体験専用線の端にある車庫に行きます。デハニ53に乗り込むと、すぐ横はこの電車ならではの荷物室。その先には、あこがれの運転台があります。昭和4年製という新製から80年以上も経った車両だけに、木製の車内は一朝一夕で造ることができない重厚な雰囲気が感じられます。
運転席に座り、渡された前後進レバーとブレーキハンドルをセット。「出発進行!」のかけ声に続いてブレーキを弛め、ノッチを入れると…デハニ53がゆっくりと動き始めます! 懐かしいツリカケモーターのグォ~ンという音が次第に早くなったところでノッチオフ。しばらく惰行で走ったところに「B」の表示があるので、ここでブレーキをかけ始めます。…ん、なかなかブレーキが利かない。おもわずブレーキ圧を追加したら、いきなりガクンッと急停車してしまいました。(汗)
このブレーキの感覚が分かれば一人前なわけですが、おいそれとは判らないのが電車運転の面白いところ。冷静なつもりでいたのですが、気がつくと心臓がドキドキしています。随分とスピードがでて、長く運転していた気になりましたが、実は最高時速は13キロ前後。運転時間も30秒くらいでした。でも、感覚的には最高時速は40-50キロで、5分くらい運転していたような気持ちになっています。

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車端部にあるメーカーズプレート。昭和4年に日本車輌會社で製造され、昭和32年にナニワ工機で改造されている。

こんな体験運転を1往復2回させてもらって、終了です。
はっきり言って、病みつきになります。
申込者が少ないときだと、講習後に追加で2往復4回の運転ができる「マスターコース」を申込み、その場で運転をする方がおいでだということがよく判ります。体験運転開始からまだ2年が経っていませんが、既に100回以上運転された方が2名、50-99回の方が7名もおいでになります。
ツリカケモーター車を運転できる一畑電車の体験運転は、1日コースが講習・構内見学・昼食つきで一人13,000円です。安くはないですが、多くの方は関東や関西からわざわざ来訪されているそうです。

かくいう私も愛知県から行きました。10歳以上で参加が可能ですから、家族連れで楽しむこともできますね。 60年ぶりの遷宮で話題の出雲大社への参詣と兼ねての、一畑電車の運転体験。今年の一押しです。
※この先、隔週で一畑電車をはじめとした出雲路の鉄道の楽しみを紹介していきます。


掲載日:2013年05月31日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。