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汽車旅ひろば - ひろやすの汽車旅コラム

汽車旅ひろば


  • ひろやすの汽車旅コラム
"鉄道フォーラム"代表の伊藤博康氏による鉄道コラム。
毎回幅広いテーマの中から、「乗ってみたい」「知って良かった」「へぇ~」な汽車旅関連の話題をご紹介します。お楽しみに!

大変貌をとげた京急蒲田駅と京急空港線 [No.H018]

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大がかりな2階建て構造となった
もと京急蒲田(空)第1踏切付近
左側が京急蒲田駅で、下が第一京浜(国道15号線)
京急蒲田駅にはもう行かれましたか?
今年、大きく変貌を遂げた駅です。
20年前までは、空港線とは名ばかりの、主として大田区内のローカル輸送を担っていた線でした。京急蒲田駅は地上にあり、発車すると急カーブで第一京浜(国道15号線)の踏切に至りますが、ここは単線。終点の羽田空港駅は空港島を目の前にした場所で、羽田空港直結の東京モノレールとは利便性で大きく差がついていました。

しかし、1993年に現・天空橋駅が開業して、空港島への延伸を果たします。その後も工事を続け、1998年にはついに現・羽田空港国内線ターミナル駅が完成。さらに、羽田空港の国際化にあわせて、2010年には羽田空港国際線ターミナル駅もできました。この間には、成田空港との直通列車を走らせたり、横浜方面からのアクセスを改善するなどして、本線並の列車本数を誇る線区へと成長していきました。
ところが、前述の京急蒲田駅をでてすぐの単線の急カーブはそのままです。また、京急本線も京急蒲田駅の南側で環状八号線(環八)の踏切があり、渋滞の原因となっていました。

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京急本線から空港線に直通する列車は、
品川方面と横浜方面の両方からくるため、
羽田空港行は2階ホームと3階ホームに分かれて発車
そこで、東京都が事業主体となり、国土交通省の鉄道駅総合改善事業費補助を活用した連続立体交差化工事がはじまります。これは、京急本線・平和島〜京急蒲田〜六郷土手の約4.7kmと、空港線・京急蒲田〜大鳥居の約1.3kmを高架にすることで、第一京浜と環八の踏切をはじめ、多くの踏切をなくすというものです。
同時に、京急蒲田駅から分岐する空港線については、複線化するために2階構造としました。高架化の2階構造ですから、下階は2階、上階は3階となり、それぞれにホームを設けます。品川方面が2階、横浜方面が3階です。ただし、空港線へはどちらからも直通するため、羽田空港行きは2階・3階それぞれから発車します。発車すると第一京浜の踏切部分はすぐのため、2階建ての高架橋でこの部分を越えるという大がかりな構造です。

これだけの大工事ですので、工事に着手したのは2001年12月でしたが、完成したのは2012年…つまり今年の10月21日でした。環八の踏切は、2010年9月に先行して高架化され、廃止となっています。ただし、線路の高架化は終えたものの、地上線の撤去やその後の整備が残っていますので、一連の工事が全て終わるのは2014年度となります。それでも、一番のネックだった京急蒲田駅付近の高架化が無事にできたため、付近の様子は一変しました。

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箱根駅伝の選手が走る第一京浜にあった
京急蒲田(空)第1踏切の様子
いまは、この上空に2階建て高架橋ができた
その変化の中でもよく知られているのは、正月に行われる箱根駅伝への影響ではないでしょうか。往路・復路とも、この第一京浜を走るため、地上の単線だった空港線の踏切を選手は渡っていきます。京急は、選手が踏切で足止めを喰らわないよう、列車の運転時間を調整していました。また、高架橋がまず1本できてからは、従来からの地上線とで複線にしていましたが、箱根駅伝の選手が通過する時間は高架側だけ使用することで、踏切を作動させない対応をしました。そのため、この時間帯は空港線内折り返し列車だけの特別ダイヤにして、本線からの直通列車を止めていたのです。
それほどまで箱根駅伝に協力している京急ですが、2008年には選手の一人がレールに足をとられて転倒・捻挫して、上位を狙っていたにもかかわらずゴールにたどり着けなかったという悲劇もありました。このこともあるのでしょう、高架化完成後に、第一京浜の踏切部分の線路がいち早く撤去されました。ですから、来年の正月は、京急も選手も大会関係者も、通過する選手を安心して見ていられることになります。

 
掲載日:2012年12月21日


●伊藤 博康(いとう ひろやす)
(有)鉄道フォーラム代表。愛知県犬山市生まれ。パソコン通信NIFTY-Serve草創期から鉄道フォーラムに関わり、1992年から運営責任者。(有)鉄道フォーラムを設立後、独自サーバでサービスを継続中。著書に「日本の “珍々”踏切」(東邦出版)「鉄道ファンのためのトレインビューホテル」「鉄道名所の事典」(東京堂出版)がある。現在、中日新聞社「達人に訊け」でもコラムを連載中。